周術期管理チーム認定試験【練習問題①-2】

練習問題

周術期管理チーム認定試験の情報と、周術期管理チームテキスト第4版を参考にして作成しています。時代により解釈が変わり、正誤が変わる場合があります。

①PICC(末梢留置型中心静脈カテーテル)について正しいのはどれか。3つ

(1)気胸を起こしにくい。
(2)閉塞を起こしやすい。
(3)内頚静脈に迷入しやすい。
(4)内頚静脈が穿刺に最も適している。
(5)カテーテル挿入時に頭部を正中に保つ。

答え

(1)(2)(3)

PICCピック(末梢挿入型中心静脈カテーテル)。肘部皮静脈から挿入

  • (1)気胸を起こしにくいのが利点である。
  • (2)逆血、投与薬剤の残留、腕の曲げにより閉塞する可能性がある。
  • (3)内頚静脈に迷入しやすい。
  • (4)肘部皮静脈が穿刺に最も適している。
  • (5)カテーテル挿入時に頭部を穿刺側に保つ。

周術期管理チームテキスト第4版P243~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

②硬膜外麻酔の合併症として正しいものはどれか。3つ

(1)頻尿
(2)血圧上昇
(3)神経障害
(4)硬膜外膿瘍
(5)局所麻酔薬中毒

答え

(3)(4)(5)

  • 低血圧は起こるが、特にショックや脱水で循環血流量が低下している患者では重篤な低血圧になる。
  • 局所麻酔薬の使用量が多い場合は局所麻酔中毒が起こる可能性がある。
  • 頻度は少ないが、重篤な合併症は、硬膜外血種と硬膜外膿瘍である。脊髄や神経根が圧迫されて神経障害を起こす
  • 硬膜外血種は抗凝固療法の普及で問題になっているが、発生頻度は1,000~10,000回に1回程度とされる。

周術期管理チームテキスト第4版P282~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

③フェイスマスク換気と直視型喉頭鏡による喉頭展開の両方が困難であることを予測する危険因子として正しいものはどれか。3つ

(1)女性
(2)BMI 30 kg/m2 以上
(3)睡眠時無呼吸の診断
(4)下顎の前方移動制限
(5)Mallampati 分類クラス I あるいは II

答え

(2)(3)(4)

  • 術前に評価すべき12の危険因子
    • Mallampati(マランパチ)分類クラスⅢあるいは
    • 頚部放射線後、頚部腫瘤
    • 男性
    • 短い甲状頤(おとがい)間距離
    • 歯牙の存在
    • BMI 30 kg/m2 以上
    • 46歳以上
    • あごひげの存在
    • 太い首
    • 睡眠時無呼吸の診断
    • 頸椎の不安定性や可動制限
    • 下顎の前方移動制限
  • マスク換気困難と直視型喉頭鏡による喉頭展開困難が同時に発生する可能性
    • 危険クラスⅠ 危険因子0~3 オッズ比1.0
    • 危険クラスⅡ 危険因子4 オッズ比2.56
    • 危険クラスⅢ 危険因子5 オッズ比4.18
    • 危険クラスⅣ 危険因子6 オッズ比9.23
    • 危険クラスⅤ 危険因子7~11 オッズ比18.4

周術期管理チームテキスト第4版P267~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

④患者の心血管合併症の危険因子(revised cardiac risk index)として正しいのはどれか。3つ

(1)緊急開腹手術
(2)慢性閉塞性肺疾患
(3)脳血管障害の既往
(4)腎機能障害(Cr>2.0 mg/dL)
(5)インスリンが必要な糖尿病

答え

(3)(4)(5)

  • 「非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」
    • 患者の心血管合併症の危険因子
    • 虚血系心疾患
    • 心不全の既往
    • 脳血管障害の既往
    • インスリンが必要な糖尿病
    • 腎機能障害(Cr>2.0 mg/dL)
    • 高リスク手術(腹腔内手術、胸腔内手術、大動脈もしくは他の大血管手術、末梢血管手術など)

周術期管理チームテキスト第4版P398 循環器系疾患患者の術前評価
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑤糖尿病患者の周術期の評価および管理について正しいのはどれか。2つ

(1)血糖値 100~200 mg/dL を目標とする。
(2)尿ケトン体陽性では手術延期を考慮する。
(3)HbA1c は約 2 週間の血糖管理状況を反映している。
(4)血糖値を抑えるため,術前の絶飲食時間は長くする。
(5)術前の血糖コントロールは食事療法と内服加療を中心とする。

答え

(1)(2)

  • 糖尿病の評価ー術前血糖コントロールの評価
    • 検体検査(血糖値、HbA1c、尿糖、尿中ケトン)
    • 臨床症状(口渇、多尿、起立性低血圧、低血糖発作)
    • HbA1c は約 2~3か月の血糖管理状況を反映している
    • 術前血糖値 100~200 mg/dL を目標とする
    • 尿ケトン体陰性
    • 1日尿糖10g以下(または1日糖質摂取量5~10%以下)
  • 糖尿病の術前管理
    • 術前禁飲食、適正な血糖値、および飢餓状態の回避を目標とする。
      • 血糖降下薬は、術前絶飲食では低血糖を生じる危険性があるため中止する。
      • 手術前の高血糖に対しては速やかな血糖管理が必要なため調節性の高い速効型インスリンを用いた治療を行う
      • 長い絶食期間は糖代謝に悪影響を与えるため、術前の絶飲食時間は最短で済むように調整する。
      • 血糖コントロール不良症例では、飢餓状態からケトアシドーシスへの発展や、低血糖などの糖尿病の急性合併症を回避するため、ブドウ糖入りの輸液と速効型インスリンの投与を行う。

周術期管理チームテキスト第4版P421~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑥気管挿管中のカプノグラム波形とその対応について正しい組み合わせはどれか。2つ

(1)PETCO2値の突然の低下  経過観察
(2)プラトー部分の切れ込  筋弛緩薬投与または自発呼吸補助
(3)基線の上昇  ソーダライム交換
(4)プラトー部分が途中で低下  β刺激薬の気管内投与
(5)右上がり  気管チューブカフ圧確認
 ※ 画像はカプノグラム波形のイメージ図です
(1)(2)、(1)(5)、(2)(3)、(3)(4)、(4)(5)

答え

(2)(3)

  • (1)「PETCO2の突然の低下」 肺塞栓 PETCO2の急激な低下から疑う。SPO2低下や血圧の低下を伴う
  • (2)「プラトー部分の切れ込み調節呼吸中の自発呼吸の出現・手術操作による横隔膜や胸壁の圧迫
  • (3)「基線の上昇」基線が[0mmHgに戻らない。吸気弁の異常、麻酔器の二酸化炭素吸収剤(ソーダライム)の劣化などが考えられる。
  • (4)「プラトー部分が途中で低下」呼吸回路の外れや、気管チューブのカフリーク
  • (5)「右上がり」①呼出障害。呼気延長。(気道狭窄、慢性閉塞性肺疾患、喘息発作、気管支痙攣など)②不完全な閉塞(呼吸回路や気管チューブの閉塞)もし完全閉塞の場合はカプノグラムの波形は消失する。不完全な閉塞でも右あがりになりそうですが、この設問(5)は呼出障害・呼気延長の波形を確認していると思います。

周術期管理チームテキスト第4版P345~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑦画像の筋弛緩モニタリングについて正しいのはどれか。1つ

a 咬筋 ーー 顔面神経
b 咬筋 ーー 三叉神経
c 外側直筋 ーー 顔面神経
d 皺眉筋 ーー 顔面神経
e 皺眉筋 ーー 三叉神経

答え

d

  • 神経と筋の選択
    • 母指内転筋 ーー 尺骨神経
    • 皺眉筋  ーー  顔面神経  ※しゅうびきん・すうびきん
    • 拇趾屈筋群 ーー 脛骨神経
    • 咬筋   ーー  咬筋神経  ※こうきん
  • 三叉神経は、12対ある脳神経の一つ。三叉とはこの神経が眼神経、上顎神経、下顎神経の三神経に分かれることに由来する。三叉神経は筋弛緩モニターで使用されない。

周術期管理チームテキスト第4版P362~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑧心電図について正しいのはどれか。1つ

a I 誘導は心筋虚血の検出率が高い。
b II 誘導は右腕と右足の電位差を記録する。
c V1 誘導は第 4 肋間,胸骨左縁に電極を装着する。
d V5 誘導は第 5 肋間,前腋窩線上に電極を装着する。
e 低周波帯域のフィルターは ST 部分の波形に影響を与えない。

答え

d

  • a 心筋虚血の検出率が高いのはV4~V5誘導である。P316
  • b II 誘導は右手から左足である。
  • c V1 誘導は第 4 肋間,胸骨縁に電極を装着する。
  • d 正解
  • 低周波帯域のフィルターは ST 部分の波形に影響を与える。高周波帯域のフィルタはQRSの高さと形状に影響を与える。P313
  • 標準肢誘導
    • Ⅰ誘導:右手→左手、Ⅱ誘導:右手→左足、Ⅲ 誘導:左手→左足
  • 胸部誘導
    • V1:第 4 肋間・胸骨右縁
    • V2:第 4 肋間・胸骨左縁
    • V3:V2とV4の中間
    • V4:第 5 肋間・鎖骨中線上
    • V5:V4と同じ高さ・前腋窩線上
    • V6:V4と同じ高さ・中腋窩線上
  • アーチファクトとフィルタ
    • 心電図のモニターには周囲からのアーチファクト(人工産物・ノイズ)の影響を取り除くために、周波数の帯域幅を狭めるフィルタがついている。
    • フィルタを使用することにより、アーチファクトを低減できる
    • 逆に波形を歪めることにもなる。低周波帯域のフィルターは ST 部分の波形に影響を与える高周波帯域のフィルタはQRSの高さと形状に影響を与える
    • モニターには、モニターモードと、診断モードがある。
    • モニターモードを使用するとアーチファクトは軽減されるが心電図波形へのフィルタの影響が大きくなる。
    • 診断時にはフィルタの影響が少ない診断モードで行った方がよい

周術期管理チームテキスト第4版P311~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑨血圧測定について正しいのはどれか。2つ

(1)脱水では陽圧呼気時の 1 回拍出量は低下する。
(2)カフの幅が狭くなると血圧が低めに測定される。
(3)動脈カテーテル留置では末梢神経障害は生じない。
(4)カフを巻く位置が心臓の位置より低いと血圧は低く測定される。
(5)輸液負荷は 1 回拍出量変動(SVV:stroke volume variance)が高値の時に有効である。

答え

(1)(5)

  • (1)正解
  • (2)最高血圧、最低血圧ともに高めに測定される。
  • (3)末梢神経障害は生じる可能性がある。合併症の1つである。
  • (4)位置が低いと血圧は高く測定される。
  • (5)正解 P325 下記解説参照
  • 観血的動脈圧波形より得られる情報
    • 正常な観血的動脈圧波形
    • 心拍数とリズム
    • 脈圧
    • 心拍出量の測定
    • 呼吸性の脈圧変動と循環血液量の状態
      • 橈骨動脈などに留置された動脈留置カテーテルとセンサーを接続して、動脈圧波形の情報に基づいて、CO、SV、SVVなど、各種フローパラメータをモニタリングできる。
      • 輸液負荷の必要性に関しては1 回拍出量変動(SVV)が有用な指標である。
        • SVVの値が13~15%を超えると体内の水分量が不足しているので輸液負荷が有効
        • SVVの値が12%よりも低いと、輸液過剰の状態で、輸液負荷は必要ない。
  • カフ幅と長さ
    • 透析患者ではシャント側に巻かないよう留意する
カフ最高血圧最低血圧
幅が狭い高め高め
幅が広い低め低め
巻きがゆるい高め高め
巻きがきついほとんど変わらない低め
  • 腕の位置
    • カフの巻く位置が心臓の位置より高いと血圧は低く測定される、低いと、血圧は高く測定される。

周術期管理チームテキスト第4版P318~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

⑩中心静脈圧について正しいのはどれか。3つ

(1)左室充満圧を直接反映する。
(2)正常値はおよそ 2~6 mmHg である。
(3)中心静脈圧は 5 相性の変化を示す。
(4)ペースメーカー植え込み後 1 週間での中心静脈カテーテル留置は相対的禁忌である。
(5)尺側皮静脈から挿入した中心静脈カテーテルは中心静脈圧モニタリングに適している。

答え

(2)(3)(4)

  • (1)左室充満圧の測定ではないため、左心系の情報を必ず反映していない
  • (2)正解 第3版P286 第4版では正常値の記載削除
  • (3)正解
  • (4)正解 第3版P288 第4版では記載削除
  • (5)PICCとして上腕尺側皮静脈が選択される。
  • 生理学的考察
    • 中心静脈圧は、右室充満圧の測定、血管内血液容量の測定、右心機能の評価に利用される。中心静脈圧は室充満圧を直接反映する。
  • 中心静脈圧波形の構成
    • 3つの波(a派、c派、v派)と2つの下降(x下降、y下降)の5相性の変化から構成される。
  • 相対禁忌 第3版P288
    • 穿刺による出血性合併症のリスクを高める凝固機能障害を合併した患者
    • ペースメーカーを植え込んでまもない患者(リードの位置がずれる可能性があり、4~6週間は控えることが望ましい)

第3版の内容の問題となっています。試験勉強では最新版の情報をご確認ください

周術期管理チームテキスト第4版P329~
周術期管理チーム認定試験2020年A参考

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